柿の葉寿司や奈良漬など、豊かな食文化が根付く奈良。
数ある名産品の中でも、実は「わざわざ食べに行く価値がある」と食通たちをも納得させるのが古都・奈良が誇る「葛」です。
本来、本場の味を求めるなら吉野まで足をはこぶのが王道ですが、日々の生活の中現地まで向かうのは少しハードルが高いもの。
そんな「近場で済ませたいけれど味に妥協はしたくない」という食通たちの願望を叶えてくれる名店がならまちにあります。
今回は、一度味わえば奈良の歴史の深みを感じられる絶品スイーツを紹介します!
ならまちに溶けこむ築160年の町家の甘味処
ならまちの定番として親しまれる、情緒あふれる町家でのんびりと過ごせる「吉野葛 佐久良(以下、佐久良)」。
ここは、築160年の歴史あるたたずまいをそのまま活かした空間が最大の魅力です。

店内は単におしゃれな町家という言葉では片付けられない、田舎の実家に帰ったような懐かしさに満ちています。

室内に置かれた調度品の一つひとつに、作り手の体温が宿っているかのような温かみがあります。一歩足を踏み入れるだけではりつめていた心がふっとほどけていきました。

また、窓越しに広がる景色は、思わず息をのむほどの美しさ。
四季折々の表情を見せる中庭は、眺めているだけで日常の喧騒を忘れさせてくれる情緒に満ちています。
この穏やかな空間そのものが、葛菓子を味わうための最高のエッセンスとなっています。
五感をゆさぶる「純度100%」の底力
実は、私たちが日頃目にしている葛菓子の多くは、サツマイモやジャガイモなど、他のでんぷんを混ぜたものが主流です。
その一方で、葛の根を砕いて取り出したでんぷんだけを原料とする吉野本葛は、きわめて希少価値の高いもの。
精製には膨大な手間と時間がかかるため、混じりけのない「本葛100%」に出会える機会は、地元でも決して多くはありません。
佐久良では、この純度100%の吉野本葛にこだわり、注文を受けてから職人が一つひとつ丁寧に練りあげます。
作り置きを一切せず、手間を惜しまないその徹底した姿勢こそが、一口食べた瞬間に押しよせる歴史の深みへとつながっているのです。
希少性の高い吉野本葛を100%使用した 佐久良の葛菓子。
今回は数あるメニューの中でも、素材本来のうま味と職人の練りの技術をダイレクトに堪能できる、一番人気の「葛きり」をいただきました。

目の前に運ばれてきたその姿は、一見すると非常にシンプルです。
しかし、氷水の中の水晶のような透明感には、思わず背筋が伸びるような堂々とした存在感があります。
余計な装飾をそぎ落とした潔さゆえに、素材の質と職人の技量が一切の妥協なく凝縮されています。
この素材に対する絶対的な自信こそが、長年愛されつづける看板商品の証と言えるでしょう。

くずきりを箸で持ち上げた瞬間は、今にもとろけそうなほどみずみずしく柔らかな質感。
しかし、いざ口に運んでみると、その印象はあざやかに裏切られます。
心地よい反発を感じるほどの確かな歯ごたえ。噛みしめるたびにもっちり、ぷるんとはじけ、躍動感あふれる食感が口いっぱいにひろがります。
のど越しはおどろくほどなめらか。
それでいて、本葛特有のしこしことしたコシが余韻としてのこります。

素材そのものの味を堪能した後は、いよいよ自家製の黒蜜へ。
口に含めば、深いコクが口の中を満たしていきます。
単体では「少し甘めかな?」と感じるほど存在感のある蜜ですが、ここにみずみずしい葛きりが加わることで、味の景色が一変。
葛がもつ透明感あふれる水分が、黒蜜の強さをやさしくほどき、「理想的な甘さ」へとみちびいてくれます。
最後の一滴まで堪能できる、粋なしめ
絶品の葛きりをすべていただいた後にも、まだ楽しみがのこっています。

それは、器に残った濃厚な黒蜜に葛を冷やしていた氷をうつして作る「黒蜜水」です。
溶けだした氷と一体になった黒蜜は、先ほどまでの濃密な印象を一変させ、絶品の黒蜜ジュースへと変身します。
ひんやりと冷えた一杯を飲みほす瞬間、この贅沢なひとときが完璧なストーリーとして完結します。
遠出をせずとも、奈良の歴史の深みにどっぷりとひたれる、 佐久良。
地元の食通たちがひそかに通い、大切にしてきた本物の味を、ぜひ一度その舌でたしかめてみてください。
最後の一滴まで楽しみつくしたとき、きっと「またここを訪れたい」という温かな想いがわいてくることでしょう。
吉野葛 佐久良
住所:奈良市高御門町2番地
アクセス:近鉄奈良駅より徒歩約10分
JR奈良駅より徒歩約15分
TEL:0742-26-3888
営業時間:10:00-17:00(L.O.16:30)
定休日:水、木曜日
駐車場:なし




















