今回紹介するのは、奈良市西登美ケ丘の静かな住宅街にひっそりとたたずむ豆腐店「寺川とうふ+(プラス)」。
ならやま大通り沿いにあり、駐車場も完備されているので車でも立ち寄りやすいお店です。
凛とした静けさの中にある温かみ
看板は控えめで、うっかりすると通り過ぎてしまいそうになるのですが、扉を開けて中に一歩入れば、その空気は一変します。
凛とした静けさの中に、どこか温かみを感じるような、不思議と背筋が伸びる、そんな空気が漂っています。

手づくりと、素材へのまっすぐなこだわり
店内は落ち着いた雰囲気に包まれ、時間がゆったりと流れているかのよう。
ショーケースに目を向けると、そこにはまるで宝石のように輝く豆腐たちが、並べられています。
白くなめらかな表面は、ほんのり艶があり、そのたたずまいからは「丁寧につくられたもの」という気品が!

寺川とうふ+では、毎朝、職人である店主が一丁一丁、手づくりで豆腐を仕込んでいます。
使っているのは、島根県産の減農薬大豆、地元の名水、天然のにがりだけ。
余計な添加物は一切使わず、素材の持つ力を最大限に引き出すことを大切にしているそう。
「子どもにも安心して食べさせられる豆腐を」という思いから、素材にも手間にも一切妥協がありません。
ひと口でわかる。「これ、ぜんぜん違う」

今回、私が選んだのは「寄せとうふ」。
冷蔵庫で冷やして、塩も醤油も何もかけず、そのままスプーンでひと口食べてみました。
「あれ、これが豆腐?」思わずそうつぶやいてしまうほどのなめらかさ。
口に入れた瞬間、ふわっとやさしい甘さが広がり、大豆の香りがふんわりと鼻を抜けます。それでいて、重さやしつこさは一切なし。
口の中でスッと溶けていき、あとには心地よい余韻だけが静かに残るのです。「何も足さなくても完成されている味」とは、まさにこのこと。
こんな豆腐、スーパーじゃ絶対に出会えない。
“手づくり”ってこういうことなんだなと、しみじみ思いました。
豆腐以外の品も、おいしく優しい

お店には、「絹ごし」「木綿」「厚揚げ」などの定番豆腐のほか、「ひろうす(がんも)」「おから」「豆乳スイーツ」などバリエーション豊かな豆腐製品がずらりと並んでいます。
私が特にお気に入りなのは「おからスノーボール」。
ホロっとくずれて、ほんのり甘い。ちょっとした手土産にすると、必ず喜ばれます。
そして、「油揚げ」も驚きのおいしさ。フライパンでさっと焼いて、醤油をちょっと垂らすだけで、香ばしさと大豆の旨みがグッと際立って、ビールにも白ごはんにも合う。
料理が苦手でも、ここで買った豆腐や揚げ物を使えば、なんだかちゃんとした食卓になります。
お店を訪れるお客さんの多くが、「いつものやつお願い」と店員さんと自然に会話している様子からも、地域にしっかりと根付いた信頼の厚さが伝わってきます。
私も、「今日はどの豆腐にしよう」「おからあるかな?」と、買い物というより“楽しみ”として訪れています。お店の人も温かくて、商品について気軽に聞けるのもうれしいところ。
「ていねいに食べること」の大切さを思い出させてくれる場所
寺川とうふ+の豆腐を食べると、自然とごはんの支度に気持ちがこもります。
お皿に丁寧に盛りつけて、薬味を選んで、家族や自分のために、ちゃんとした食事を用意したくなる。
忙しい毎日の中で、ほんのひと手間をかけたくなる。そんな気持ちにさせてくれるお店は、なかなかありません。

豆腐は日本の食文化の根幹ともいえる存在。だけど、いつのまにか「安くて当たり前」「日持ちして当たり前」と思われるようになってしまったのかもしれません。
そんな中で、「寺川とうふ+」が守り続けるのは、「豆腐って本来、こういうものだよね」と思い出させてくれる原点の味。丁寧につくられたものを、丁寧に味わう。そのシンプルな幸せが、ここにはあります。
西登美ケ丘で、今日も職人の手で仕込まれる一丁の豆腐。
きっとあなたの食卓にも、静かだけれど確かな幸せを届けてくれるはずです。
寺川とうふ+(プラス)
住所:奈良県奈良市西登美ヶ丘1丁目1‑14
アクセス:近鉄けいはんな線「学研奈良登美ヶ丘駅」から車で約7分
TEL:0742-87-1855
営業時間:10:00-18:00
定休日:日曜日
駐車場:あり(2台)


















